投資で勝てるかどうかは、「どこで買うか」よりも「どこで負けを認めるか」で決まります。
「ウォール街の大熊」と呼ばれた伝説の投機家ジェシー・リバモアは、生涯をかけてその答えを体現しました。
4度の破産と、そのたびの復活。彼の人生そのものが、損切りの重要性を語っています。
「大きな損失は、小さな損失を放置した結果にすぎない」
— ジェシー・リバモアの言葉として伝わる格言(参考:Edwin Lefèvre著『欲望と幻想の市場』)
では、なぜ損切りはそこまで重要なのか?
そして、なぜ多くの人ができないのか?
リバモアの経験と考え方をもとに、初心者目線でシンプルに解説します。
リバモアとはどんな人物か?

ジェシー・リバモア(1877〜1940年)は、20世紀初頭のウォール街で活躍した投機家です。
1929年の世界大恐慌では相場の崩壊を予測して約1億ドル(現在価値で数千億円相当)を稼ぎましたが、生涯で4度の破産も経験しています。
この矛盾こそが、リバモアを学ぶ価値そのものです。
「天才でも間違える。だからルールが必要だ」——彼の人生は、その証明です。
なぜ損切りが重要なのか?

① 小さく負けて、大きく勝つため
リバモアの投資哲学の核心はこれです。
- 勝つとき → 大きく勝つ
- 負けるとき → 小さく負ける
このバランスが崩れると、どれだけ勝率が高くても資産は減ります。
例えば:
- 10回中7回勝っても
- 3回の負けが大きければトータルはマイナス
だからこそ、負けをコントロールする=損切りが最重要になります。
② 資金を守るため
投資は「生き残りゲーム」です。
損失が大きくなるほど、回復に必要なリターンは非線形に跳ね上がります。
| 損失額 | 元に戻すために必要なリターン |
|---|---|
| −10% | +11% |
| −30% | +43% |
| −50% | +100% |
| −70% | +233% |
リバモアはこう考えていました。
「市場で生き残ることが、次のチャンスを掴む条件だ」
— リバモアの投資哲学をまとめた言葉として広く引用される
損切りは「負け」ではなく、“次の勝ちのための防御”です。
③ 相場は必ず間違えるものだから
どんな投資家でも、予想は外れます。
リバモアほどの相場師でさえ、何度も大きく間違えました。
それでも復活できたのは、間違えたときの損失を最小限に食い止めるルールを持っていたからです。
重要なのは、
- 当てることではなく
- 外れたときにどう動くか
損切りは「自分の間違いを認める行為」であり、
それができる人だけが長期的に勝ち残ります。
なぜ損切りができないのか?

ここが本題です。
ほとんどの人が負ける理由です。
① 「戻るかもしれない」という希望
含み損になると、こう思います。
- もう少し待てば戻るはず
- 売ったら上がる気がする
これは完全に感情トレードです。
リバモアはこう警告しています。
「相場で最も危険なのは、人間の希望と恐怖だ」
— 『欲望と幻想の市場』Edwin Lefèvre著に記された、リバモアの言葉として伝わる表現
「戻るかもしれない」という希望は、相場が生み出す幻想です。
その幻想に気づけるかどうかが、勝者と敗者を分けます。
② 損を確定させたくない(現実逃避)
損切りすると、
- 自分の判断ミスを認めることになる
- 「負け」が確定する
これが嫌で、人は持ち続けます。
しかし実際は、損切りしなければ損が拡大するだけです。
見ないふりをしているだけで、損はすでに存在しています。
「含み損」と「確定損」の金額は同じです。
違うのは、あなたの気持ちだけです。
③ 「安くなったから買い増し」という罠
初心者がよくやる行動です。
- 下がる → ナンピン(買い増し)
- さらに下がる → またナンピン
これはリバモアが最も嫌った行動です。
「下がっている銘柄に資金を追加するな。 上がっている銘柄にこそ、資金を追加せよ」
— リバモアの投資原則として広く伝わる考え方
上がっているものに乗るのが基本であり、
下がっているものにしがみつくのは、ただの祈りです。
④ 「どこで切るか」を決めていない
多くの人は、
- どこで買うかは考える
- どこで売るかは考えていない
これが致命的です。
リバモアはエントリー前に必ず「撤退ライン」を決めていました。
その基準は、固定的なパーセントではなく、相場の節目(ピボットポイント)です。
リバモアが使った「ピボットポイント」とは?

ピボットポイントとは、相場が方向転換しやすい価格水準のことです。
具体的には、以下のような水準を指します。
- 直近の安値(この水準を下回ると下降トレンドが継続するサイン)
- 過去に何度も跳ね返された支持線
- 相場が一時的に止まって揉み合った節目の価格帯
具体例
例えば、ある株を1,000円で買ったとします。
- 買う前に確認すると、900円付近に直近の安値がある
- 過去にも何度か900円で反発している → ここが支持線
この場合、「900円を下回ったら損切り」というラインが自然に導かれます。
「ピボットポイントを下抜けたとき、相場はあなたに間違いを教えている。 その声に耳を傾けよ」
— リバモアの手法を解説した文献に記される考え方
つまり損切りの判断基準は「何%下がったか」ではなく、
「相場の構造として、ここを割ったら買いのシナリオが崩れる」という水準です。
ピボットポイントの見つけ方
チャートに慣れていない段階でも、以下の手順で目安を見つけられます。
① 直近1〜3ヶ月の最安値を確認する
チャートを開き、過去1〜3ヶ月で最も低かった価格を探します。
その水準が、最初の「割ってはいけないライン」の目安になります。
② 移動平均線を参考にする
日本株では25日線・75日線がよく使われます。これは、多くの投資家や機関が意識している目安であるため、実際に支持線として機能しやすい水準です。株価がこの線を明確に下抜けたとき、トレンドの転換サインとして捉えられます。
③ 過去に「何度も止まった価格帯」を探す
チャート上で、価格が同じ水準で2〜3回反発している箇所があれば、
そこは多くの投資家が意識している支持線と考えられます。
初心者のための損切りルール(リバモア流)

リバモアの考え方をもとにした実践的な手順です。
ステップ1:エントリー前に撤退ラインを決める
上記の方法でピボットポイントを確認し、「ここを下回ったら切る」水準を設定します。
これはエントリーと同時に、セットで考えるものです。
ステップ2:そのラインに達したら、迷わず切る
「戻るかも」と考え始めたら、それは感情トレードのサインです。
ラインに達した瞬間に決済する。ただそれだけです。
ステップ3:チャートが読めない段階は固定ラインを補助に使う
ピボットポイントの判断にまだ自信がない場合は、「エントリーから−5〜8%」という固定ラインを暫定ルールとして使いましょう。これはリバモアの手法そのものではありませんが、「損切りを実行する習慣」を体に染み込ませるための第一歩として有効です。
チャートが読めるようになったら、固定パーセントからピボットポイント基準へ段階的に移行していきます。
損切りは「終わり」ではなく「仕切り直し」

損切りというと、「負けを認めて終わる行為」と捉えがちです。
しかしリバモアの哲学では、まったく逆です。
損切りは、次のエントリーのための準備です。
相場から退いた瞬間、あなたは冷静さを取り戻せます。
感情のしがらみがなくなった状態で、改めて相場を観察できる。
そして次のピボットポイントを確認し、条件が整えば再エントリーすればいい。
リバモアはこう考えていました。
「相場はいつでもそこにある。 焦って乗り続けるより、降りて次の波を待て」
— リバモアの投資哲学をまとめた言葉として広く引用される
損切りした銘柄に再エントリーすることも、何ら問題ありません。
重要なのは「同じ感情で持ち続けること」を避けることであり、
「いったん切って、冷静に判断し直すこと」はリバモアが推奨する動き方です。
損切り=敗北ではありません。
損切り=次の勝ちへのリセットです。
まとめ:損切りは”技術”ではなく”ルール”

損切りができるかどうかは、センスではありません。
- ルールを決める
- 感情を排除して守る
これだけです。
リバモアは4度破産し、そのたびに復活しました。
しかし最後の破産は、自らのルールを破り損切りを先延ばしにし続けた結果だったと言われています。
どれほどの相場観を持っていても、ルールなしには勝ち続けられない——リバモアの人生は、その証明です。
「間違えたらすぐ降りろ。正しければ利益は伸びる」
— リバモアの言葉として広く伝わる投資の原則
今日の取引を振り返ってください。
「どこで切るか」を決めずにエントリーしていたなら、それが最初に直すべき一点です。
ルールを一つ決めて、明日から守る。それだけで、あなたの投資は変わります。
参考文献
- Edwin Lefèvre 著『Reminiscences of a Stock Operator』(邦題:欲望と幻想の市場)
- Jesse Livermore 著『How to Trade in Stocks』(邦題:リバモアの株式投資術)
※本記事は投資助言を目的としたものではありません。投資は自己責任でお願いします。
